血友病患者さんへ
当院では、自然出血ゼロだけではなく、関節症ゼロを目指した治療を行っています。
定期的に関節エコーを行うことで、X線写真では発見できない早期の関節症を見つけることができます。
より早い時期から対策を講じることで、それ以上関節症が進行しないよう、治療方針の見直しを行います。
血友病患者さんが、QOLを損なうことなく、自分のしたいことがおもいっきりできるよう、お手伝いしていきます。
血友病保因者さん、血友病患者さんのご家族も、保因者診断、出血時の対応など、何か気になることがあれば、一度ご相談ください。
血友病の診療について
- 当院の製剤処方は院内処方になるため、在庫が限られます。そのため、1か月分など、たくさん処方を希望される際には、受診処方希望日の2日前までには電話連絡をお願いします。
- 受診時には、輸注記録を必ずお持ちください。
- 初めて当院を受診される際には、血友病AかBか、インヒビターの有無、体重、出血歴など、詳しく問診をさせていただきます。
- 適切な医療を提供するために必要ですので、ご協力をよろしくお願いします。
- 当院では関節エコーによる出血や滑膜炎の有無の確認、関節症の評価を行っております。関節エコー目的の受診も承っております。
- 関節痛出現時にも、出血なのか、滑膜炎なのかを関節エコーで評価することで、適切な製剤投与を行うことができます。
- 当院は名古屋大学医学部付属病院と連携しており、手術や入院が必要な際には、速やかに紹介させていただきます。
- 普段のフォローは当院、半年~1年毎の全身関節症の評価は名古屋大学医学部附属病院、というように、あなたに合ったスタイルでの受診の選択が可能です。
- 定期的に名古屋大学医学部附属病院での血友病カンファランスにも参加しており、新薬などの情報も提供させていただきます。
- 保因者診断も承っております。一度ご相談ください。
関節ケアの重要性
あなたは、今までに関節評価をうけたことがありますか?
実は一度もありません、という方もみえるかもしれませんが、
日本ではそれは決してまれなことではありません。
現在日本では、まだまだ関節を定期的に評価する文化は根付いておらず、
令和2年度 血友病患者のQOLに関する研究でも、ここ5年間で約3割の方は関節診察を受けていないと回答しています。
関節エコーに関していうならば、約8割の方が受けたことがないようです。
一方、海外では、関節エコーなどで関節を定期的に評価することは通常の診療として行われています。
関節エコーなどで滑膜炎が見られれば、疾患活動性は高いとみなされ、定期輸注レジメンの見直しが行われます。
現在、日本でも定期輸注が浸透しているため、関節症は起こらないのではないか、と思われている方もいるかもしれません。
しかし、定期輸注を続けていても、実は関節症が進行している、というデータも発表されています。
また、定期輸注を100%できていても、関節出血はゼロにはなっていないのです。
さらに、どんなに優れた新薬を使用したとしても、ベースラインの関節の状態がよくなければ、
どうしても出血は起こってしまいます。
関節出血がなくても、ねんざなどでも関節にダメージが生じていることもあります。
そのため、現在のご自身の関節の状態を知ることはとても重要です。
関節出血をゼロにし、関節症をゼロにする。
そして、血友病であろうとなかろうと、自分らしく人生を謳歌できることを、
当院は血友病診療の目標にしております。
そのために、当院では定期的に関節評価を行っております。
関節評価の方法としては、
可動域などの関節診療に加え、
X線写真、関節エコー、MRIが挙げられます。
このうち、X線写真は骨の評価が得意です。
しかし、骨の変化が起こっているときには、関節症はかなり進行しているときです。
血友病性関節症の早期に変化が起こる場所は、軟骨や滑膜であり、
この部分の評価には、関節エコーやMRIが有用です。
当院では、関節エコーで関節評価をしています。
痛みなどの症状があれば、その都度関節エコーで評価しますが、
たとえ症状がなくても、定期的に関節エコーを行っております。
実は、症状がなくても関節出血を繰り返し、関節症が進行してしまう、というケースもまれではないのです。
定期的に関節エコーを行うことで、症状が生じる前の早期の関節症を発見し、
定期輸注レジメンや出血時治療の見直しを行っています。
関節症が進行してしまうと、関節痛が生じたり、
関節が動きにくくなって歩きにくくなったりしてしまいます。
そうなると、日常生活に支障が出てきてしまいます。
現代では、血友病患者さんの予後は血友病でない患者さんと変わらなくなってきています。
一生涯関節を健康に保ち、やりたいことが思う存分できる人生を送っていただきたいと考えています。
そのためにも、関節ケアはとても大切です。
すでに関節症が生じている方もあきらめる必要はありません。
これ以上関節症が悪くならないようにするためにも、関節ケアは重要です。
また、大人になってから定期輸注を新たに始めたり、定期輸注レジメンを見直すことで、
関節症が改善するケースもみられるようになっています。
いつから関節ケアを始めても遅いことはありません。
あなたも今日から関節ケアを始めませんか?
普段は違うご施設に通院されている方でも、
関節評価だけを目的に当院を受診されても大丈夫です。
どうぞ遠慮なくお気軽にご相談ください。
血友病の医療費助成について
当院は小児慢性特定疾患と先天性血液凝固因子障害等研究事業の認定施設です。
当院の受診では、上記の医療費助成を受けていただくことができます。
ただし、小児慢性特定疾患を利用する場合には、利用される医療機関を保健所へ申請しておくことが必要です。
もし急な出血などで受診された場合、後日保健所に申請することでも、小児慢性特定疾患の適用を受けることができます。
ご不明な点は、遠慮なくお問い合わせください。
小児慢性特定疾患制度や先天性血液凝固因子障害等研究事業には有効期限がありますので、継続して利用する場合には、継続申請が必要です。
住所が変わる場合にも保健所への申請が必要ですので、ご注意ください。
小児慢性特定疾患は20歳の誕生月で受給資格を失いますので、先天性血液凝固因子障害等治療研究事業への切り替えをしましょう。
上記以外に、特定疾病療養制度がありますが、こちらは使用できる医療機関の制限はありません。
特定疾病療養交付は、加入している健康保険の窓口に申請が必要です。
- 先天性血液凝固因子障害等研究事業
- https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kenkotaisaku/senketsu.html